こだわりのロングセラーNo.4

『文明堂カステラ』

 

ガムはロッテ、チョコレートは明治、そしてカステラといえば、文明堂である。

独断と偏見といわれようが、「これでいいのだ。こにゃにゃちは」とバカボンの

パパになってしまうくらいカステラは文明堂なのだ。

 

たとえ文明堂のカステラを食べたことがない人でも”カステラ一番、電話は二番、

三時のおやつは文明堂”のCMを知っているだろう。

オッペンバッハ「天国と地獄」の軽快なリズムにのせて、小熊のぬいぐるみが

ラインダンスを踊るCMは昭和38(1963)年から登場した。

ちらみに正式名称は「文明堂豆劇場・小熊のダンス」というらしい。ある調査に

よれば日本人の98%の人が知っているという驚くべき認知度だと言えよう。

このCMは昭和37年、文明堂の社長がテレビ番組で動物のぬいぐるみがダンス

するショーを見て「私の求めているものはこれだ!」と感激したという。

そこでオーストラリアから来日していたそのショーを演じていた「ノーマン&

ナンシー・バーグ夫妻」を訪ねCMづくりを依頼したという。

実はこの小熊、ダンスの最後でシッポを振るので、猫ではないかという説も巷で

ささやかれたこともある。確かに夫人が最初ぬいぐるみに想定したのは欧米で

人気の”キャンキャンキャット”という猫だったという。結果は小熊に落ち着いたが、

シッポはその「名残り」らしい。そしてこのロングセラーCMは基本を変えずに

色々なバージョンがつくられてきた。

はすぴーは「天国と地獄」のリズムが聞こえてくると、なぜかむしょうにカステラを

口にしたくなるのだが、これはいわば「パブロフの犬」というか「小熊のカステラ」

症状みたいなもので、同じ症状に悩む日本人は多いように思われる。

さて”カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂”の広告コピーだが、

戦前の大阪にあった肉屋の看板に「肉は一番、電話は二番」にヒントを得て

昭和12(1937)年に誕生したというから、まさに不朽の名作といってもよいだ

ろう。これに合わせて支店などの電話番号がそろえられて、全国で2番は80本、

他に20番、200番などを確保しているらしい。

しかし、数の違いこそあれ、電話番号に関して言えば、はすぴー的には

「電話は4126(ヨイフロ)」を徹底しているハトヤホテルに軍配をあげたい。

ところで、カステラだが、約400年前、ポルトガル船で渡来したフランシスコ

会の神父により日本にもたらされたことは有名な話だ。名称はスペインの当時の

王国・カスチラ国の菓子(BOLLO DE CASUTILLA)に由来したそうだ。そして原料・

製法・風味などを洗練し、工夫されて銘菓・長崎カステラとなったというわけだ。

文明堂の創始者・中川安五郎は、長崎県南高来郡の大工の三男に生まれた。

中川はカステラ製造法を学び、23歳の時=明治33(1900)年に長崎市で開業

した。中川(なかがわ)という名前から、中が輪(なかがわ)、すなわちドーナツ

を作るのかと、はすぴーは考えたのだが、残念ながらドーナツではなく、カステラ

であった。(あは、ちょっと寒すぎたかな)

東京進出を考えたのは、佐世保に分店を持つ実弟の宮崎甚左衛門。大正11(1922)

年に上京して上野に店を構え、当時の三越呉服店と納入契約を結び、地方銘菓販売

の先駆けとなる。そして名コピー「カステラ一番・・・」を生み出し、文明堂の

カステラ王国の基礎を築くことになるのだ。

CMが長生きすれば、当然、商品の知名度があがっていくという典型的な実例だと

言えよう。カステラは南蛮渡来の食べ物というイメージがあるが、日本で独自に

発達した日本独自の食べ物なのである。

そして小熊のダンスの”カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂”の

CMは今後もずーと流れて、私たちを温かい気持ちにさせてくれるだろう。

↑クリックするとCMの歴史にジャンプします

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はすぴーには、文明堂のカステラには忘れられない思い出がある。いつもながら

超私事の話なので、ご多忙な方はここで「戻す」をクリックした方が良いと思う。

 

はすぴーはカミさんとは、大学時代に同じサークルで知り合い、腐れ縁のまま

気がつけば、いつのまにか結婚してしまった。

大学を卒業した翌年に「一緒になろうか」ということになり、カミさん(当時の彼女)

は両親に会って正式に結婚の話をつけて欲しいという。

こういう場合、男ちゅうやつはどっと緊張してしまい、体内のアドレナリンの分泌が

20%アップして「ぼぼぼ、ぼくは、そのぅ〜、おお宅のおおお嬢さんと、けけけ

結婚させて くくくくだされ。お殿様 いやお父さん」と吃ったりしてしまうそうだ。

そこで、俺は会社の先輩(現在、某上場会社のS社長)に相談したところ、

「何事もリラックスと勢いが大切だ。定石としては、酒の一升瓶でも持参して、お互い

が酔っ払ったタイミングを見計らって、”結婚させてください”と言えばいいのだ」と

アドバイスしてくれた。素直な性格の俺はその定石を実行することに決めた。

さらに好きな酒の銘柄なら、なおさらGoodだなぁ〜、そこに彼女が作る肴なんかでてきたら

「もう好きなようにしなさい」ということになるだろうなぁ〜。俺って実に気配りのでき

るやつだなぁ〜などと自己満足もした。

カミさん(当時の彼女)に「お父さんと酒でも呑み交わしたいんだけど、お父さんは

好きな銘柄の酒とかあるのか」と聞いたところ、まったくの下戸でアルコール類は

いっさい飲まないという。ガーン!完全にシナリオが崩れてもうたじゃないか。

「で?お前のオヤジ(←お父さんからオヤジに格下げ)は何が好きなんだい?」と尋ねたら

「文明堂のカステラ」が好物だと言う。

 

てなわけで、俺はデパートで桐箱入りの一番高級な「文明堂のカステラ」を持参して

愛車カローラに乗り、彼女の家を訪問した。

居間に通されたら、義父が無愛想な顔をしてテレビをみながら待っていた。ちなみに義父は

元自衛官なので、どちらかと言えば無口でお硬い人間だ。それに対して、俺は風船のように

軽薄でちゃらんぽらんなやつだから、体内のアドレナリンの分泌がまずは10%アップした。

テレビでは「都はるみ特集」のようなものをやっていたので、「お父さんは都はるみが好き

なんっすか?」などとおマヌケにことを聞いてしまい、アドレナリンはさらに20%アップ。

「いや別にそういうわけではない。たまたまテレビでやっているだけだ」と無愛想な回答。

その他、何を話したのかほとんど覚えていないが、たぶんしょーもないことを話したのだろう

と概ね想像がつく。しばらくしたら「文明堂のカステラ」とお茶を彼女が運んできた。

そして義母もやってきた。カミさん(彼女)は自分たちのなりそめや今後のことをしゃべり、

この人となら幸せになれそうな気がすると言ってくれて、俺は「文明堂のカステラ」

むしゃむしゃと食べながら「そうだ、そうだ、この人となら幸せになれますぅ〜」と

後方支援する。(笑)アドレナリンが平常に戻ってきたあたりで「もう2人が決めてし

まっているのなら、しょうがないか」と結婚に合意してくれた。(^_^)v

俺はめったに正座なんかをしないもんだから、案の定、足がしびれてしまった。帰る際に

しびれのスカタン(←こういうマンガもあった)になった足を我慢して、普通に歩こうとしたが

ビッコをひいてしまい、義母に笑われたことはカッチョ悪かったぜぃ。

そして、愛車カローラはマニュアル車だったので、しびれた足ではうまくクラッチが踏めずに

ガックンガックンと走っている様も情けなかったぜぃ。

 

そういうわけで「文明堂のカステラ」は、はすぴーにとって忘れなれない

食べ物のひとつになっているのだ。

 


動画と音声はお友達の「レディオアクティブ」さんのところで見れます。

事業所名 株式会社文明堂 新宿店

創  業 昭和8年12月21日

生産営業品目 カステラ・三笠山・和菓子・洋菓子

資本金 3,456万円

年間売上高 58億1,000万円

社員数 男子122名 女子122名 計244名

臨時社員 計221名

売店数 直売店83店 卸売店199店 他67店

工場 武蔵村山工場

 

16世紀(今から400年前)スペインよりポルトガル船で長崎の地にカステラ伝来する。

明治33年/創業。初代、中川安五郎が長崎・丸山を中心とする菓子製造販売業を開始。

大正3年/上野の博覧会にカステラの出張製造販売をする。当社初めての東京進出だった。

大正11年/上野黒門町に店舗を構えて順調に発展を続けるが、翌12年の関東大震災により、

東京の拠点を消失したため長崎に一時引き上げ、後に麻布箪笥町(現在の麻布店)を再建する。

大正14年/宮内庁御用達を賜る。

昭和8年/新宿店開店。

昭和14年銀座店開店。

第2大戦/全店残らず消失。

昭和21年/銀座・新宿の両店を復活。

昭和26年/名店街方式にてデパート取引再開。

昭和49年/東京武蔵村山工場操業開始。

昭和52年/新宿本店新装なる。

昭和54年/コンピュータシステムを導入(物流管理からスタート)

昭和58年/新宿店創立50周年。

昭和62年/宮崎正雄会長逝去、社葬

昭和63年/洋生菓子を残し全製造部門が武蔵村山工場に移転。

平成元年/商品総合研究開発所開設。BN御苑ビル竣工。

平成4年/新宿店創立60周年。

平成5年/(株)菓房むさし野操業。

 

 

文明堂のホームページ

(原稿:2001.9.30)


 

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