2002.9.14(土)文化放送のラジオ番組「片岡鶴太郎の土曜日は鶴日和」より
【週刊つるぴかマガジン】
ナレーション:あなたは文化フライを覚えていますか?昭和三十年代、東京下町の縁日で子どもたちに大人気だったあの味、
文化フライ。中身がないのに文化フライ。ソースどぼどぼ文化フライ。はなたれ小僧のおぎのしげおも大好きでした。
(鶴太郎のセリフ)「おばちゃーん1枚おくれよ。大好きなんだよ、文化フライ」
いつの間にか東京から姿を消した文化フライ。今日は絶滅の危機に瀕した文化フライの謎に迫る。文化フライ、中身がなくて
も文化フライ。ソースべちゃべちゃ文化フライ。そう言えば弟のよしおも大好きだった。
鶴太郎:いや〜うれしいねぇ。
アナウンサー:文化フライということで、ナレーションをつけてみました。もうスタジオい〜においがしてますけども……。
鶴:もう早く食べたい。私の目の前にあるんだもんなぁ。
あ:まずご紹介しましょうか、鶴太郎さん。東京に残る最後の文化フライのおばさま。足立区梅田の
長谷川商店、長谷川まさこさんでございます。
鶴:どうも
あ:おはようございます。朝早くからありがとうございます。
鶴:お母さんが作ってたんだ〜、文化フリャイ。
長谷川:はい〜。
あ:いいかおり〜。
鶴:ぼくはね、日暮里のお諏訪さまで食べてたの。お母さんそこ来てた?
長:はい。行きました。
鶴:来てた!
あ:じゃあ食べてるんだぁ。
鶴:でね、必ずくじがあった、くじが。
長:ええ。
鶴:くじ、これ。いやいやいやいやいやいやいやいや。
あ:ははははは……スタジオにあるんですね。
鶴:もうもう食べてんの。いいねあなた。
あ:スタッフはもう食べております。
鶴:食べちゃってるよ、もう。
あ:これ何ですか?
鶴:これね、これべろーんとやって、
あ:一枚の四角い板があって……。
長:ハッハッハッハッ
鶴:でほら、ここ赤いとこ来ると、おっ、ほらほらほら……これ何?これ二本だ。二本。ここだと三本だよ。
あ:コマみたいになってるんですね、板の上に。
鶴:そうそうそう。
長:おなか痛くなっちゃった。(さっきから二人の会話を聞きながら笑いが止まらずうれしそう)
あ:線を引いた上に止まると当たりなんだ。
長:そうですね。
あ:回して。
鶴:私二本だよ。ちょっと○○ちゃんやってみて。
あ:あっ、にほーん。これくじなんですね。文化フライを買うとこれができる?
鶴:そうそうそう。お母さんそもそもこの文化フライっていうのはどういう歴史があるの?
長:歴史ったって、たまたまあの頃は三十年代は文化包丁とか文化鍋とか、あったでしょ。一番最初にお鍋を買っ
たのが、文化鍋。それじゃその名前つけましょって、それになったんですよ。
鶴:は〜ぁ。
あ:じゃあ長谷川さんが発明したんですか。
鶴:文化フライってお母さんが作ったの?
長:そうです。
あ:あら、そうなんだぁ。
鶴:あ、そうなのぉ。
じゃあお母さんのところを経ていろんな方があちこちでやってたってこと?
長:あちこちっていうけど、もう一組だけなんですよね。二人なんです。
鶴:そうなのぉ。
長:うちともう一人の方と。
鶴:で、縁日で売ってたの.。そんで私食べてね、お祭のときしか食べられなかったの。これが、「あーっ、また文
化フライある」って毎年夏食べてたの。妙にうまいんだ。何だか何か妙にせこいんだけど、(おばさんの笑い)
そのせこい味がたまらなくいいんですよ。
あ:せっかくですから揚げたてを食べてください、鶴太郎さん。
長:冷めちゃったんじゃないの。
あ:いえいえ大丈夫ですよ、きっと。うわ!ちょっと、ほんとに、
鶴:これ、おソースもかかってるの? かかってるんだ。
あ:うっすーい。メールをくださった文化フライさん、(ここで鶴太郎に「ちょっと食べてみる?」と文化フライをもらって)
あっ、ありがとうございます。ほんとだ、ハムカツのハムがないみたいな感じ。いただきます。
長:はい、どうぞ。
あ:あったかい。
長:熱いの揚げましょうか。
あ:ひ〜ん(熱いものをほおばって思わず高い声)
長:揚げてきましょうか?
あ:(そう聞かれて)うふふふふふ
長:おソース足りなかったら、がぼがぼつけてください。あるんですよ、持ってきましょうか。
鶴:なつかしぃ。(思わず笑いがこぼれる)
あ:ほんとに小麦粉だけですね、これ。
長:そうです。
鶴:これ材料は何、小麦粉と何?
長:だけです。
あ:だけぇ?!
鶴:だけ?! ちょっと甘みがあるねこれ、
長:そうですね。
鶴:これ甘みは何?
長:えーっと、今ほらあれ、コーヒーの中へ入れる、何て言うんですか?
あ:甘味料?
長:ええシュガーカットっていうの?
あ:あ〜
長:うちはお砂糖使わないんですよ、両方とも。
あ:あっ、あの液体の?
長:ええ、そうです。
あ:んー、液体のお砂糖だ。
鶴:うーんガムシロ。
あ:コロッケフライの大きさですね、上から見ると。
鶴:小判型してねぇ。
あ:横から見ると、ねぇ3oくらいの薄さで。いや、これが文化フライだ。
鶴:はぁ〜。それをただ油で揚げてるだけ?
長:そうです。
あ:どうですか、ひさびさに食べて。
鶴:これうまい。何だか知んないけど、うまいね。何か入ってるのか、薄いハムでも入っているのかなと思ったら何も入ってない。
長:ははははは
鶴:何も入ってないんだけどうまいんだ何か、ねっ。
あ:おいしーい。これ、ビールとか合いそう。
鶴:うん。これお母さんが考えたの?
長:はい。
あ:これ、今は売ってるんですか? 今売ってないんですか?
長:ただ昔っからのね、取引してるとこが、お寿司屋さんとか…
鶴:お寿司屋さん?!
あ:お寿司屋さんでこれ出てるんですか?
鶴:ああ、そうそう。よく握りであるもんね。(笑)文化フライ握ってっていうと、へいいっちょうっていってね。
長:いっぱい飲むのにね、
あ:ああ、つまみ。
長:おつまみ何にしましょうっていうと、お客さんが文化フライっていうんで、お寿司屋さんも配達してるんです。
あ:へ〜ぇ。あとはあとは?
長:あと、居酒屋さんね、あちこちの。
あ:は〜ぁ。じゃぁ、メニューに文化フライって書いてるわけですね。
長:そうですね。
あ:ふ〜ん。
鶴:いやぁね、突然ね、3週くらい前でしょうか。ペンネーム"文化フライさん"って出たわけ。(あ:松戸市の方)
えーっ、よーく文化フライ知ってるなぁと思ってね。それでその話になって、この方もね、まさか俺が知って
るとは思わなかったんですよ。そんで話がはずんじゃってね。
長:ああそうですかぁ。
鶴:それでその後ですよ。お母さんのとこに、「お母さん、文化放送で文化フライの話してたよ」って話になったでしょ?
長:本人は全然わかんなかったのにね、周りの近所の人がね、やってるやってるって。何をやったのって聞いたら、
あんた知らないのって、知らない、はははははは。
あ:じゃぁ、土曜のこの時間っていうのは長谷川さんは何をしてらっしゃるんですか?
長:あの日はちょっと病院行ってたんですよ。
あ:あ、そうですか。これね、松戸市のラジオネーム文化フライさんからFAXがきてましてね。
えーっと、松戸の方は、長谷川さんは…?
長:行きました。
あ:あっ、そうですか。
長:船橋とか松戸とかね。
あ:北小金の方なんですが?
長:北小金の植木市ね。
あ:あーそうですか。春日八郎さんに似たお父さんと(長:はい)美人のおくさん、(鶴:あらっ、お母さんのことだ)
(長:いえいえとんでもない)ちょっと太目の息子さんと三人でやってましたね、という。
鶴:お母さん、じゃあお母さんがあちこちの縁日だとかお祭へ行って……。
長:ええ行きましたね
鶴:あっそう。売り上げあったでしょう、いっぱい。
長:(笑いながら)おかげさまで。
鶴:儲かったでしょ。今文化フライ御殿だもんね。(笑)こりゃぁすごいよ、うん。
あ:ほんとぉ?!
長:うそ、うそ(笑)。
鶴:文化フライみたいな形したお家に住んでるの(笑)。
あ:今、あの縁日では出てないんですもんね。
長:やめました。
鶴:やめちゃったのぉ?!
長:ええ、もう身体が調子悪いからね。
鶴:やっぱり忙しいですか、この縁日とかお祭まわってたら。
長:そうですね。
あ:でしょう。だって2軒だけですもん長谷川さんと。で、今はもう長谷川さんとこだけで、ねぇ。
鶴:最盛期は、一夏、夏祭りだとか縁日で相当毎日まわりました?
長:そうですね。昔は九月は一日から三十日まで毎日(鶴:毎日?!)、お祭があったでしょ。(あ:え〜、すごーい)
それで四十年代くらいからは今度、土日にかけてやるようになったから、ねぇ。
鶴:忙しかったんだぁ。で、お母さんが全部生地を練って、これ型があるわけですか?
長:だからもうね、手がこういうふうに腫れあがっちゃうんです。
あ:うわ〜。やり過ぎで?
長:ええ。
あ:はぁ〜ぁ。
鶴:そうぉ。
あ:これ、当時、FAXでいただいてますが、20円ぐらいから100円ぐらいしてますか?
長:ええ、最初5円からで。
鶴:5円でしょ、5円、10円の時代だもん。
長:そうそう、5円、10円、15円、30円、それから50円、それから100円、150円ですよね。
あ:今150円?。
長:はい。
鶴:はぁ〜ん。
あ:今はじゃあ、そういう注文がくれば売るというかたちなんですか。
長:はい。
あ:は〜ん。味どうですか? 変わってます? 全部ぺろっと食べちゃいましたけど
鶴:おいしいね。なんだか妙にうまいんだよね。
あ:あの長谷川さんもこれは召し上がる?
長:はい、食べます。
あ:あっそう。
長:食べたいときは自分で揚げて自分で食べてます。
鶴:やっぱり何か、懐かしさがあるんだろうね。
あ:なんで思いついたんですか?こういう…
鶴:こういうものって昔あったの?
長:あの〜、けっきょく浦安の方でやってるのは、うどん粉を練ってそれでこのくらい小さく幾つもパン粉の上へ
落としてって、手でポンポンとたたいてそれ揚げてね。今でもそうやってる方いますよ。
鶴:はぁ〜ぁ。
長:だけどあの、揚がったとき、たぬきせんべいみたいにこうなっちゃうのね。
あ:えぇえぇえぇ。
鶴:あっそう。
あ:うんうんうん。これちゃんと卵型ですもんね。
鶴:ふーん。で、要するに、えーっと小麦粉と、なんですかこれ?
長:ふふふふ(無言で笑うのみ)。
鶴:内緒?
あ:企業秘密?
長:(笑い続ける)
鶴:企業秘密なんだぁ、そりゃそうだよね。
あ:これソースも特製なんですよね。
長:そうです。
鶴:企業秘密なんだぁ、お母ちゃん〜! 教えてくんねぇんだぁ。
あ:そうそう、今日はですね鶴太郎さん、この文化フライ10個入りを5人の方にプレゼントいた
だきました。(鶴:いいねぇ)ありがとうございます。
鶴:あのぉひとつはさ、ラジオネーム文化フライさんに。あの方がきっかけから。
あ:あっそうですね。松戸市の文化フライさんに。
鶴:あげようよ。喜ぶよ、ねぇ。
あ:なので、文化フライ希望係り…
長:青柳さんですか?
あ:青柳さんですね。
長:来週の11日までに宅急便で送ってくれってお電話ありました。
鶴:あったのぉ!(笑)
あ:そうなんだぁ。
鶴:はははは、すごいねぇ、やっぱり。
あ:もう常連さんなんですか?
長:そうですね。それで、昨晩は「明日行ったら是非(ぜし)、松戸の青柳ですけど、鶴太郎さんによろしく言ってください」ということでした。
鶴:そうですか。青柳さん、どうもありがとうございます。あなたのおかげで私も何十年ぶりかで文化フライをいただくことができました。
あ:それでは文化フライ10個入りを5人の方、今日FAX、電話、メールで募集しております。文化フライ希望係りまでお寄せください。
やっぱりお母さんも「ぜし」って言いますね。(鶴:あっ、やっぱり。ぜし、ね)どうもありがとうございました。
今日は朝早くから長谷川商店の長谷川まさこさんでした。ありがとうございました。
鶴:どうもありがとうございました。
長:ありがとうございました。
鶴:片岡鶴太郎 長:文化フライのおばちゃん(長谷川まさこ) あ:アシスタント(村野日南)
この放送をMDに録音し、カミさんがリライト(テープおこし)してくれた。
「続・文化フライ」は はすぴー倶楽部、始まって以来の「夫婦共同作品」であります。(笑)
アホなことに付き合ってくれたカミさんに感謝♪