こだわりのロングセラーNo.5

『マジックインキ』

「マジック」と聞いて、あなたは何を連想するだろうか。魔術・手品のことか

「マジックインキ」のことだろう。今回、調査した「マジックインキ」はそれ

ほど私たちの日常生活の中に溶け込んでいると言えよう。

木材・金属・ガラス・陶器・布・革・プラスチック、、、「どんなものにも

書ける魔法のインキ」これが商品の由来であることは言うまでもない。

私たちがふだん「マジック」と呼んでいる正式名「マジックインキ」は一般名称

ではなく、商品名なのである。だから「?」マークがついていないものは、

サインペンとかネームペンなどのようなネーミングになっているはずだ。

 

「マジックインキ」は1953(昭和28)年に、「ギターペイント」で有名な大阪

寺西化学工業から発売されたのだが、当初の日本人に、ほとんど見向き

されなかったという。

マジックインキを製造するきっかけは、内田洋行の社長だった内田憲民氏が

アメリカ視察から油性インクを使ったペンを持ち帰ったことにあるらしい。

それを見て、寺西化学工業の社長が、「これは将来、有望な商品になるぞ」と

研究を始めた。そういうわけで開発段階から内田洋行が関係しており、現在、

「マジックインキ」の商標登録は内田洋行となっている。

(販売も積極的に行っているようである)

 

発売当時、筆記具といえば、鉛筆・万年筆・筆墨が中心で、デパートで実演販売

をしても、マジックインキは1日に2〜3本しか売れなかったそうで、今でいう

キャンペンガールが「んもぅ、こんな売れない商品なんかイヤっ!えーん」

と泣き出してしまったこともあったらしい。

売れなかった他の理由として、価格が80円もしたからだろう。現在、120円

で安いところでは85円くらいで購入できる、、、ということは今の値段と

ほとんど変わらないということだ。

さらに考えられることとして、キャップをしないでおいたら書けなくなるという

点だろう。当時、このクレームは相当あったらしい。

ようやく売れ始め出すようになったのは、1956年頃で新聞社の選挙速報

テレビのニュース解説に、マジックインクが使われて一般の人に知れ渡ったのである。

さらに日本のゴッホと呼ばれた山下清画伯が、マジックインキで点描画を描いた

のも、いい宣伝になったという。その後、値下げと宣伝効果が功を奏して、人気が

急上昇し、会社や学校に普及するようになり、売上高もうなぎ上りとなった。

そして現在にいたり、ロングセラーへの道を築いたというわけだ。

 

さらに、時代とともに色を増やしたり(現在16色+白)インクの成分の改良が行われ、

極太から極細までバリエーション(0.5mmから18mmまで7種類)をもつなどして、

企業、学校、商店、そして家庭でも欠かすことのできない文房具となっている。


さて、はすぴーが小学生の頃には、すでにマジックインキは一般的にものとなって

いて、クラスにも常備されていた。

マジックインキといえば、「模造紙」、そしてチームによる発表会、、、と連想し

てしまう。たぶん当時は色のついたマジックインキは、青・赤・黄・緑・紫くらい

だったように思う。これらを駆使して「私たちの足立区の歴史」「今と昔のちがい」

なんて課題を整理したもんだ。

5〜6人のチームで共同作業をしていると色々なやつがいたりする。

・マジックインキで線を引く時「キィーー、キキキ」と不快な音をわざとさせるやつ

・「なんかいい臭いだなぁ〜頭がクラクラしてきたぞ」という危なげなやつ

・普段、あまり字がうまくないのだが、模造紙に字を書かせると、急に達筆になるやつ

・勉強嫌いで、マジックインキをピンにみたて、スーパーボールでボーリングするやつ

・模造紙を折って線を引いたり、鉛筆で下書きをするやたらと几帳面なやつ

・することがないので、マジックインキの箱に落書きをするやつ

ところで、マジックインキを分解したことがあるだろうか。(普通しないか・・・)

ガラスのビンから芯を取り出すことが可能なのだ。広い面積の部分を塗る場合

普通にマチマチやると大変なので、芯を取り出して一気に塗ってしまうことが

できた。当然のことながら、先生に見つかると職員室行きであるし、自らの手

が汚れてしまうことを覚悟しなくてはならない。

 

現在、マジックインキの太さは7種類もあるようだが、はすぴーが小学生の時には

太いものと細いものの2種類だけだった。貧乏な我が家にも2種類のマジックインキ

は存在していたが、油性ペンであるマジックインキでいたずらされたら大変だという

理由で、はすぴーには触らしてくれなかった。

はすぴーの母は、几帳面で細々とした性格だったので、学校の持ち物には何にでも

名前をこれで書いてくれた。

竹の定規、分度器などの文房具、教科書・ノートはもとより、運動靴の内側にまで

書いてくれた。そしておパンツまでも。。。

 

そういうわけで、どうも「マジックインキ」というと、身体検査の時に自分の名前

が書かれた白いパンツを思い出してしまうのであった。


 

寺西化学工業株式会社のホームページ

(原稿:2001.10.27)

 

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