アメリカン・クラッカー

 

昭和40年代に流行ったものの王者的存在として、忘れていけないものは

なんといっても「アメリカン・クラッカー」であろう。

 

はすぴー世代の人間にとって「アメリカン・クラッカー」を知らない者は

いない。たとえ、自分が実際に遊んだことがないとしても、名前を聞いた

だけで「あー、あのカチカチね」と反応されるはずであろう。

すなわち、それだけ日本全国的に流行っていた おもちゃなのであります。

(一部の地域では「カチカチボール」と呼ばれてらしい)

 

世代の違う方のために、少し説明をさせてもらいましょう。

「アメリカン・クラッカー」は極めてシンプルなもので、まず中央に金属製

のリング。このリングから約30センチくらいの太めで丈夫そうな紐(ひも)

が二本垂れていて、紐の先に硬質のプラスチックでできた球(直径4センチ)が

2個くっついているだけである。

 

遊び方は、まず「精神統一」から始めなくてはならない。

一瞬、目を閉じ、呼吸を整え、心の中で「いざ!いざ!」と言ってから

リングをもち、最初はゆっくり上下運動される。

すると球同士がぶつかりあい、カチカチと音をさせ、勢いがついてきたら

渾身の力をこめて、「とりゃぁぁぁ〜」と上下させる。

球は半円を描きながら、円の上と下で互いにぶつかりあい、カチカチと

いう音が「バチバチ」あるいは「ビチビチ」という何とも騒がしい音になる。

たったこれだけの遊びである。

 

だから「何だんねん」と関西弁で聞かれても、「これだけやねん」と関西弁

で答えるしかないのだが、これだけのために日本中の少年から青年が熱中したのであった。

これが「日本全国総カチカチ騒ぎ」のゆえんなのであります。

 

銀座や上野の繁華街では、露店商人たちがゴザを広げ、いとも簡単そうに

カチカチバチバチ!とやって「さあ、あなたもアメリカン・クラッカーで

カチカチやってアメリカンの雰囲気を楽しもう」とかいって商売していた。

(こんなことでアメリカンフィーリングになるか!)

値段は覚えていないのだが、たぶん当時のお金で500円くらいしたのではなかろうか。

球の色も赤、青が標準タイプですぐに黄色、紫、ピンク、緑が追加された

ように思う。あるいは「まがい物」が色を変えたのかも知れない。

 

当時、小学生だった はすぴーも父親に甘え、いわば「磯野 カツオ戦略」

を使い、青い「アメリカン・クラッカー」を買ってもらったことがある。

実際に遊んだ人なら記憶にあるだろうが、いざやってみると案外と難しく

カチカチの助走期間は誰にでも出来るのであるが、バチバチになるまでは

しばらくの修行期間が必要であった。

この修行とは、精神的にも肉体的にも苦痛を伴う期間であり、うまくいか

ないと硬質の球は容赦なく手や腕(場合によっては顔)にあたり、マジで痛い。

練習でアザをつける少年も多く、学校でアザのついた友人を見かけると

「おっ、お前も修行の身じゃな」と妙な連帯感を感じたのでありました。

 

そして、なんとか修行の時期がすぎて「いっちょまえ」になった頃には

「アメリカン・クラッカー」は紐がきれ、球が目にあたり、失明したと

いうニュースがあちこちで聞こえ、「こいつは危険なおもちゃ ざぁ〜ます」

の攻撃にあい、ブームが下火になってしまいました。

 


***** エッセイはここでは終わらない! ***********

 

「アメリカン・クラッカー」ブームから約30年後の現在、なにげなく

ディスカウントショップをのぞいた時に偶然にも発見しました!!!

だれがどうみても、それは「アメリカン・クラッカー」。しかもバージョン

アップされて現代に蘇ってきたのです。

 

名称:フラッシュ ラップボール

価格:980円(定価は未定)

対象年齢:8歳以上

発売元:(株)カネヒサ(大阪市東住吉区西今川1-14-13)

 

「アメリカン・クラッカー」との相違点は 球がぶつかると同時に「光る」

機能が追加されておりました。

そういえば、昔からおもちゃの代表取締役の「けん玉」や専務クラスの

「ヨーヨー」もデジタル化され、音と光のファンタジーみたいなものを

見かけたことがあるが、この「フラッシュ ラップボール」も同じ路線を

行く懐古的おもちゃとして、現代に復帰したというわけか。 

まっ、こんなものは話のネタとしては面白いが、あまり売れそうにないだろう。。。。

 

***** さらに 続く 改良安全型クラッカー *******

 

先日、小旅行の帰りに高速道路の とあるドライブ・インに立ち寄って

お土産コーナーをぼんやりながめていたら、カチカチバヂバチの音が

聞こえてくるではありませんか。

もしや??と思って見てみると、小学生らしき男の子が変なおもちゃを

上下にふって遊んでいるではありませんか!

これは姿・形こと異なれ、かつての「アメリカン・クラッカー」系の

もの。いわば、「これなら安全、進歩改良型アメリカン・クラッカー」

と呼べるもののようだ。

 

どのように改良されたかと言うと、うまく説明できそうにないので、図解する。

(下図参照) 

要するに紐がなく、三角形の先に球がついており、棒を中心にして、カチカチ

させる仕組みなのである。

「アメリカン・クラッカー」に比べ、円運動が正確なので、前述のような

修行をしなくても誰でも出来、肉体的苦痛を伴わないことも改良点である。

 

しかし、かつての「アメリカン・クラッカー」を知る我々にしてみれば

「こらぁ〜、なめとんのか われぇ〜! しゃきっとせい!」といいたく

なってしまうくらい軟弱なものに思えてしかたがなかった。

 

以上のように、かつて一世を風靡した「アメリカン・クラッカー」は

ブームの終わりに、ターミネイターが『 I'll be back 』とささやいたの

如く、一方では、デジタル化され、また一方では安全改良され、現代に

蘇り、こうして 懐かしいもの好きのはすぴーのエッセイの肴にされる

運命にあったのである。

 

***** さらに 続く 改良安全型チープクラッカー *******

その後、駄菓子屋で上の改良安全型のミニ版を発見した。

仕組みは前述のものとまったく同じなのだが、いかにも駄菓子屋において

ありそうなお子ちゃま向けでチープな感じのするものだった。

しかもこれは「シャボン玉」製造機を兼ねており、棒の部分に

石鹸水が入っているのだ。(笑)

値段:100円

      

 

***** さらに 続く 、、、キャラクター型クラッカー *******

その後(2003.6.21)、ディズニーシーのお土産コーナーでカチカチという音に反応。

もはや、はすぴー君はパプロフの犬のようにカチカチという音に条件反射してしまう体質になってしまっているのだ。(笑)

なんと、今度はディズニーの「リトルマーメイド」に登場する

キャラクターを使ったクラッカーなのである。仕組みは上記の安全型と同様であるが、

キャラクターの両手を使ってカチカチさせる発想は笑える。

 

 

ps,もしかしたら、また別の姿になっている「アメリカン・クラッカー」

もどきのものが、他にもあるかも知れないので、そのような情報がございま

したら、ぜひご連絡をいただきたいと思います。

 



あの頃のセピア色の想い出



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