絶滅寸前こだわり商品No.11

卓上ピアノ

男の子がおもちゃ屋の前で母親に「あれ、買ってくれぇ〜」と泣き叫びダダを

こねている姿を見ると、「昔の俺もあんなだったなぁ・・・」と微笑んでしまう。

それに対して女の子の地団太はあまり見かけないから、女性ちゅーもんは

小さい頃からエライもんだと感心してしまう。

昭和40年代の女の子はどんなおもちゃを欲しがったのかカミさんに聞いて

みたら、「そーねぇ、やっぱりフランス人形とか、リカちゃん人形とか、

卓上ピアノとかかしら」という答えだった。リカちゃん人形は今でも人気商品

だが、卓上ピアノはしばらく見かけなくなった。

はすぴーの姉も子どもの時に卓上ピアノを持っていたのでなんとなく覚えて

いるが、木製で、色は赤(黒いのもあった)、鍵盤は2オクターブ半くらいで

半音の部分は黒く塗ってあったが、半音の鍵盤はなかった。(だから半音を使う曲は弾けない)

鍵盤には「ど」「れ」「み」・・・の文字がふってあり、音はチンチンという

感じで子どもながらチープな音だと思った。

この卓上ピアノは少し前まで、おもちゃ屋に必ずおいてあったように思うのだが、

確かに最近では見かけなくなった。そこで今回はかつて、女の子たちが憧れた

木製の「卓上ピアノ」の存在について調査してみることにした。

 

まずはいつもの必殺"客を装った調査作戦"開始。

おもちゃの大手量販店"トイザらス"に電話をかけてみた。

 

はすぴー:「あのぅ〜卓上ピアノを探しているんですが、おたくにおいてありますか?」

店員:「キーボードじゃなくて、ピアノですか、、、ちょっと待ってください」(待つこと1分)

   「お待たせしました。取り扱っておりますよ、4,890円です。」

はすぴー:(おや?あっさりゲット?)「それって昔ながらの木でできたピアノのおもちゃですよね?」

店員:「ええ、卓上ピアノですよ。でも木製じゃなくてプラスチックですけど」

はすぴー:(昔ながらのやつといったろうが!)「プラスチックですか?

できれば木製のやつが欲しいんだけどなぁ〜」

店員:「木製のものは置いてないですねぇ〜。キーボードなら木目調のものもありますが」

はすぴー:(こいつ、いやにキーボードにこだるな)「そうですか、プラスチックなら結構です」(ガチャ)

 

もう1軒"ハローマック"という店にも電話してみたが、内容的にはほぼ同じで、

プラスチックのものなら取り扱っているが木製のものは置いてないという。

うーむ、絶滅の可能性がでてきたぞ。もう少し詳しい情報が欲しかったので、

今度は顔なじみの近所のおもちゃ屋をのぞいてみることにした。

やはり電子キーボードの類とプラスチック製のピアノはあるものの、ターゲット

とするブツは発見できなかった。

そこで店の主人に尋ねてみることにした。

 

はすぴー:「あのぅ〜昔ながらの卓上ピアノで木でできたやつを探しているんですが、

こちらに置いてありませんか?」

店主:「あーあ、あれね。このところ、取り扱っていないねぇ。昔はよく売れたけど、

    最近は電子楽器に押されちゃって、ほとんど売れないから卸さなくなっねぇ。」

はすぴー:「そうですか。娘に買ってあげようと思っているんだけど、電子音はどうも

     気にいらなくてね。(←とっさに出たウソ)あのピアノはもう作っていないのかなぁ?」

店主:「あっ、そういえばあれを作っていたメーカーが倒産したようなこと聞いたことがあるぞ」

はすぴー:「えっえっ、本当ですか?メーカーが潰れちゃったんですか」

店主:「まだ最近のことだと思うよ。うー、2年くらい前かな」

はすぴー:(道理で売っていないわけだ)「そうですか。ますます欲しくなりました。残念だなぁ〜(笑)」

 

・・・ということで、どうやら卓上ピアノを作っていたメーカーは倒産してしまったらしいので、

その事実関係を「G−Searchデータベース(新聞記事検索)」を使って調べてみたところ、

以下の記事を見つけた。

 

 「卓上ピアノ」もう弾けない 名古屋の井上楽器、倒産

 

 おもちゃの小型ピアノをつくっていた日本で最後のメーカーが消えた。

「卓上ピアノ」の井上楽器製作所(名古屋市東区)が九日までに事業を中止し、

近く自己破産を申請することになった。かつて子どもの音感教育用としても使われ、

家庭に普及していた卓上ピアノも、電子楽器などに押され、売り上げの減少が著しかった。

 日本では戦後、物づくりの盛んな名古屋で輸出向けのメーカーが一気に増えた。

一九四八年に創業した井上楽器もそのひとつ。八〇年ごろには国内市場の八割を占める

トップ企業となった。 しかしそのころを頂点に、本物のピアノや電子楽器などが家庭

に広がるようになり、売り上げは減り始めた。最盛期には名古屋だけで二十数社あった

メーカーも、五年ほど前に井上楽器を残すだけになった。井上楽器は卓上ピアノが減った分、

木工技術を生かし、化粧箱などをつくってきたが、今月八日に一回目の不渡りを出した。

民間調査会社の信用交換所によると負債総額は約六億七千万円。

 

                            1999.03.10 東京新聞朝刊 

 

この記事によれば、平成11(1999)年3月に名古屋にある「井上楽器製作所」という

メーカーが倒産し、卓上ピアノは絶滅してしまったらしい。やはりキーボードなどの

電子楽器に消費者ニーズが移行したためである。

新聞記事の見出しの「"卓上ピアノ"もう弾けない」にもこれを書いた記者の淋しさの

気持ちが表現されていると思う。(うっうっ、、、お前はいいやつだなぁ〜泣)

さらなる調査によれば、井上楽器は卓上ピアノの売り上げの低迷を補うべく木工技術

で培ってきたノウハウを活かし抗菌木製品、まな板・風呂スノコ・その他ギフトセット、

さらにはキャラクターものも出したようだが売り上げの減少に歯止めがかからなく、

残念ながら今から約2年半前に倒産に至ったということだ。

(うっうっ、、、お前もいいやつだったのになぁ〜泣)

さらに名古屋とピアノの関係について意外なことがわかった。名古屋名物といえば、

みそカツ、ういろう、きしめん、ひつまぶし等、食べ物が思い浮かぶが、なんとかつては

卓上ピアノは、それらを上回る名古屋の特産品だったのだ。

もともと名古屋は大正琴の発祥地として知られている。大正の初め名古屋在住の

月琴奏者・川口音海(森田伍郎)がニ弦琴にピアノの鍵盤装置を応用した大正琴を

考え出した。以来名古屋は大正琴を生産してきたが、大正13(1924)年に帯状の

鉄板をキイで叩く木製の玩具を売り出した。大正琴にヒントを得てつくられた子供用

のこと楽器は、チンチンピアノと呼ばれた。これが卓上ピアノの前身というわけで、

はすぴーが感じとった「チンチン」という音は大正解だったのだ。\(^o^)/ワーイ

その後、チンチンピアノに改良が加えられ、昭和4(1929)にはピアノ線を使った

卓上ピアノが登場したのである。これが大当たりして、翌年からは海外への輸出も始まり、

名古屋は楽器玩具メーカーの中心地となった。戦後の復興も著しく、卓上ピアノは輸出品の

花形として脚光を浴びた。てなことで、チャーリーブラウンのお友達の「シュローダー」

いつも弾いている卓上ピアノはメイドイン・ジャパン@名古屋という可能性もあるのだ。

チャーリーブラウンのお友達の「シュローダー」

しかし、昭和50年代から陰りが見え始め、20数社あったメーカーが少しづつ消えて

いったらしい。その理由として考えられるのは、日本は豊かになって本物志向が生まれ、

高嶺の花だったピアノが庶民にも買えるようになったことと、子どもの数が減ったこと、

そして電子オルガンや電子キーボードの登場が子どもたちのおもちゃのピアノへの関心を

失わせたからだと分析してよいだろう。

そして、平成11(1999)年3月、卓上ピアノをつくっていた最後のメーカー

"井上楽器製作所"が自己破産を申請したことで、卓上ピアノは絶滅してしまったのだ。

先の新聞の見出しではないが、卓上ピアノをもう弾けないかと思うと妙にほろ苦い

淋しさを感じてしまうのは、はすぴー世代のおばさん・おじさんだけだろうか。。。


その後の調査によると、、、、

卓上ピアノは、本物のピアノメーカーである、河合楽器製作所が、今も作ってるようです。

カワイ ミニピアノ P-32/P-25 というのが商品名、各2色(赤・白)、

\12,500-と\5,500-。P32は50cm弱四方のサイズで3.3kgもありますから、材質も木製の様子。

商品紹介のページに写真が載ってましたが以下のURLで、知育ホビーの項目のPDFを参照。

下の方にある黒い奴は電子おもちゃピアノですが、赤いのと白いのはたぶんチン・チン!ピアノ。

詳しくはカワイへお問い合わせされてくださいませ。

http://www.kawai.co.jp/toy/3.html#11

 

ハイテクバージョン電子グランドピアノ

ディズニーバージョン電子ピアノ

さにらお子ちゃま向け1オクターブオルガン

我が家の押し入れからぴっぱり出した「もっきん」

【その名誉を称え、ご参考まで】

(株)井上楽器製作所

愛知県名古屋市東区矢田町6-44-1

TEL:052-721-7386 FAX:052-722-2442

(電話してみたが、案の定通じませんでした)

 

(原稿:2001.9.22)


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